遊ぶ川の深さは、子ども基準で考えてあげよう

遊ぶ川の深さは、子ども基準で考えてあげよう

川に着いて、子どもが浅瀬でぱしゃぱしゃやっている。深さはひざ下くらい。大人の目には、どう見ても安全な場所に見えます。

前回の記事で、流れの中で立とうとすると足が川底に挟まる事故(フットエントラップメント)が起きること、目安は自分の足首からひざ下までだと書きました。

今日は、それをもっと子ども基準で考えてみたいと思います。

河原の石をひっくり返して生き物さがし。浅瀬は川遊びのいちばん楽しい場所です

子どもの基準は、子どもの体で測る

前回の「足首からひざ下まで」は、あくまでその人自身の基準です。ここが落とし穴で、大人のひざ下は、子どもにとっては腰~胸くらいの高さだったりします。

つまり同じ場所に立っていても、大人と子どもではまったく違う川にいるんです。大人が「ひざ下だから平気」と思っている場所が、子どもには腰上まで水がある場所かもしれない。

だから子どもと行くときは、子どものひざ下で考えてください。その子の体に合わせて測り直す。これだけで見える景色がだいぶ変わります。

フットエントラップメントは、浅くても起こる

足が川底に挟まる事故(フットエントラップメント)は、深さで決まるものではありません。流れがあれば、浅くても子どもなら十分に起こりえます。

水中にこけて、うつ伏せ状態になり、足が岩に引っかかる。そこに速い流れがあると、自力で顔を上げられなくなるんです。大人なら手をついてすぐ起き上がれる深さでも、子どもの体では起き上がれない。

想像してみてください。転んだ拍子に足が挟まって、顔が水の中にある。腕の力で体を起こそうとしても、流れが上から押してくる。声も出せない。ひざ下ほどの水の中で、それが起きます。実験でも、水深16センチのところで立った姿勢から座り込んだ姿勢に変わるだけで、流される力が2.1〜4.9倍になることが確かめられています(読売新聞オンライン ヨミドクター 2022年7月26日)。浅瀬で滑って転んだ瞬間が、まさにこれです。

浅い場所でも流れのある場合、立とうとしない。足が石にはさまると、ライフジャケットを着ていても顔を上げられなくなる

出典:(公財)河川財団『川の中や水際などにおける水難事故を防止するための対策』(2026年6月版)

川を渡るときは、必ず手をつなぐ

なので、小さい子が川を渡るときは絶対に手をつないでください。

小学生でも同じで、ひざ下の深さでも、手をつなぐか、子どもの下流側に居て、すぐ手の届くところで見守っていてほしいです。

「もう小学生だから」と離れた瞬間が、いちばん危ないと思っています。

でも手をつないで渡るのって、慣れてしまえば当たり前の動作になります。

子どもは、静かに溺れます

そしてこれが、僕がいちばん知っておいてほしいことです。

子どもは、叫びません。溺れかけた経験のある子の保護者アンケートで、86.5パーセントが「悲鳴も助けを求める声も出していなかった」と答えていました。呼吸をするだけで精一杯で、声を出す余裕がないそうです。本能的溺水反応というらしいです。

僕もガイドトレーニングの一環で、ライジャケ無しで川を流された経験がありますが、息を吸うのに必死で声を出す余裕なんかありませんでした…

「浅いから」「足がつくから」と目を離した数十秒のあいだに、いつのまにか子どもの姿が見えない。

水中で引っかかって、自力では顔を上げられない状態になっている。それが起こりうるということだけは、頭の隅に置いておいてほしいです。

水難死亡事故の死因でいちばん大きいのは、息ができないことによる溺死

出典:(公財)河川財団『川の中や水際などにおける水難事故を防止するための対策』(2026年6月版)

大人も、一緒に川に入るのがベスト

じゃあどうやって見守るか。うちがやっているのは単純で、大人も川に入ってしまうことです。

子どもが2人いるなら、大人も2人とも入る。これが一番、大人に余裕が出ます。岸から見張っていると、何かあったときに駆け込むまでの数秒がどうしても遅れますし、どのくらい水が冷たいのか、とか自分の体感でわかるので、そろそろ上がった方がいいかなという判断もしやすい。

もし大人が1人しかいないときは、流れのあるところで遊ぶのは、やめるという選択も大事だと思います。

大人も水の中に入ってしまう。岸から見張るより、この距離のほうが安心です

足がつかないのが怖い子には、生き物探しを

見守る大人に人員が余裕がない時であったり、3歳くらいだと、足がつかないところをまだ怖がる子もいます。うちもそうでした。

そういうときは、無理に深いほうへ連れて行く必要は全然なくて、一緒にライフジャケットを着て、水辺に足をつけながら、岩をどかして生き物を探す。

これ、子どもにとってはめちゃくちゃに楽しいんですよね!(僕はそこまでですが…笑)

カニやヤゴが出てくると、子どもは深さのことなんて忘れて夢中になります。川に慣れるのはそのあとで十分です。

浅瀬は、とっても楽しい場所です

勘違いしないでほしいのは、浅い所も危険!だから行かないで!と言っている訳ではないということです。

浅瀬で石をひっくり返して生き物を探したり、たも網を沈めたり。川遊びのいちばん楽しい部分がそこにあります。

子どもの体で測って、手をつないで、大人も一緒に入っている。それだけ揃えば、あとは思う存分遊ばせてあげてください。

ひざ下の浅瀬。大人の目にはこう見えているだけ

【ちょっと余談】

うちの上の子は7歳で、水泳を習い始めて1年弱になります。去年までは足がつかないところが本当に怖くて、川遊びで深いところではライフジャケットをつけていても怖がっていました。

それが今年、川に来てみたら別人でした。多分スイミングで、「けのび」の練習をしていて、そこにライフジャケットの浮力が加わる。流れの中で流されながら息継ぎをして、クロールみたいな体勢でぐんぐん進んでいくことができるようになってちょっと感動しました。

水泳を習うと、川への恐怖心がなくなって、川と親しみやすくなる。これは思っていた以上に大きいかもしれません。

一方で、下の3歳は、まだ水泳を習っていません。でももともと水が大好きで、既にライジャケ+浮き輪でガンガン流れてきますし、浮く感覚を自分でつかんで自由自在に楽しんでいます。こればっかりは、その子の身体感覚による部分も大きいんだろうなと思います。

参考リンク

この記事を書いた人

安永翔太

安永翔太(やすなが しょうた)

元・激流カヤック・ラフティングのプロガイド。国内外の川を漕いだのち、家業の板金加工会社((株)ヤスナガ・福岡県柳川市)に戻り、アウトドアブランド「Naturesteel.」を運営しています。いまは週末、妻と2人の子どもと近所の川や山へ。このブログでは、日常のすぐそばで自然を楽しむ知恵と道具の話を書いています。